戦争が終わり、世界の終わりがはじまった 6


 街灯近くのこちらの顔は相手に見えても、相手のいる方は闇に沈んで、顔の輪郭はうっすらとしかわからない。
 ちり、としたものを首筋の後ろに感じた瞬間、麻衣は地面を蹴っていた。 

 背後で殺意を持った音が起こる。小さな爆発音。おそらく拳銃が土を抉る音だろう。
 池の縁にいた人影に組み付くと、腕をねじりあげそのままの勢いで、力を加えた。
 ぼきりと手の中で聞きなれた音がして、麻衣は足をたわめ、もうひとりの方に全力で蹴飛ばす。ぐうっと空気が喉につまる音とともに、すっ飛んでいく人体。
 それを見送るヒマもなく、撃鉄の音に身体を低くする。
 地面に手をつき、身体が土に汚れるのもかまわず横に転がった。虚しい空気を裂く発射音。
 地を蹴って起きあがる。相手が再び狙いを定めるより麻衣の方が早い。
 素早く間合いをつめ、拳銃を持った右手を蹴り上げた。
 綺麗な放物線を描いて拳銃が宙に飛び―――麻衣は冷静かつ正確に、鳩尾に一発入れていた。
 立っている者のいなくなった池のほとりで、麻衣は落ちてきた拳銃を左手で受け止める。
 深刻で、殺意がからんだ、とても静かな数秒の出来事だった。


     § § §


 銃、か―――?
 麻衣は手のひらの中の塊をしげしげと見つめる。
 あまりおおっぴらには言えないことだが、麻衣は、銃にふれるのはこれが初めてではない。あの……六年間で。
 もちろん「あれ」はこれとはメーカーも種類も異なっていたが、それでも銃は銃だ。
 暗くてよく見えないので、麻衣は銃を手にしたまま街灯の下に移動した。困惑はますます深まる。
 まず、軽い。おまけに、なんだこの作りは。
 素材がやわで麻衣が両手に力をこめればへし折れそうなほどだ。そして軽い。どう見ても、これは―――。
「プラスチック?」
 そう思わずつぶやいた瞬間、地面が爆発した。

2005 3/3up


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