おまけ
シンは悩んでいた。
もしも。
もしも、
もしも、「精霊が嘘をつけない」としたならば。いやしたならばではない。それは事実だ。では―――
キールがいつか、言ったことがある。
精霊は、好んで誤解される形容を多用し、人を誤解に導く、と。
けれども―――嘘は、つけないのだ。
だとしたら。
『それはあなたの子どもにお尋ねなさい』
あの……言葉は。
いや……まて。
キールはこうも言った。塩を塩と知らずに砂糖と呼んでも、精霊が嘘をついたことにはならない。つまりそれが真実だと思い込んでの上でそう言ったならば、偽りを精霊は言えるのだ。
嘘は言えないけれど、偽りはいえる。
けれども―――精霊は、死の精霊はシヴァースのことをよく知っていた。
精霊が嘘を言えない以上、シヴァースの出生時の事情は本当のことだろう。
調べたのか、とにかく知ろうという意図のもと行動をおこし、そしてその知識を得たのだ。
その精霊が―――シヴァースを「緑の座の子供」といった。
考えてみれば、シヴァースの系図をひもといたとき、彼女は一度も「そう」だとは言っていないのだ。「緑の座がそう考えている」という言い方をしていた。
誤解されやすい形容を好んで多用し、誤解へみちびく。
―――ナルホドね。
シヴァースはため息を吐き出し、頭を振ってその思考を追い出した。
数刻後に驚天動地の出会いが待っていることを知る由もなく、短髪の美貌の少年はいつものように仕事机にむかった。