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小さな手が、葉をひっくり返して影に隠れた果実を見つけ出す。
親指ほどの大きさの、かなり大きな実が三つ組になっている。
「これがラキの実。アシの種も美味しいけど、この時期じゃまだちょっと太ってないからおいておこう。十日もすればすっかり食べごろなんだけど。ルルの実は今、皮を腐らせるために地面に埋めてあるんだ。あと三日もすれば食べられるよ」
子供らしい純粋に感心した眼差しで、長い髪の少年は友人を見つめた。
その裏のない尊敬の眼差しを向けられた側は、照れたように頭をかく。
「イールはほんとに、詳しいね……僕はぜんぜんわからない」
「みんな、そうだよ。草の民だって最初は何も知らないよ。いろいろヘンなものをヘンな時期にとってきて、おなかを壊す。ナギにぜんぶ教えてもらったんだ。食べられるものと時期。ぜんぶ」
「食べられるものと時期?」
「うん。すべてのものには時があって、そのときがくるまでは採っちゃいけない。その時がきても、全ては採ってはいけない、手間はかかるけど、いろんなものから少しずつ。それは絶対に守らなきゃいけないって」
誰もが感心する美貌の少年は、感心して頷いた。
根こそぎ食べたらその植物は姿を消す。根こそぎとまではいかずとも、半分以上を摘んだら翌年の実りは少なくなる。
いろんなものから少しずつ―――長い付き合いをするには、それが一番だった。
「時を間違えて食べたら毒になっちゃうのもあるし、時を間違えたらほとんどのものがまずいから」
「……ということは食べてみたんだ」
言い当てられて、少年は少しバツの悪そうな顔をする。
「うん、まずかった。ちょっとぐらい早くてもいいかって思ったけど、てんで駄目。一日違うだけで、ぜんぜん味がちがうんだ」
食べられるもの、食べられないもの、食べる時期。
様々なことを、そうして子供たちは自然に学習していく。自分の体で失敗を実感することで親の言葉に従うことを憶えながら。
子供は好奇心のかたまりだ。親に言われたことにそのまま従う子供などいるものか。そうして痛い目をみて後悔というものを味わって初めて、親の言葉を受け入れていくのだ。
「毒になるとかいうのは? 大丈夫だったの?」
「俺が止めたよ。食べてもお腹壊す程度だけど」
二人の背後からぶっきらぼうな声がかかる。
「キール」
キールと呼ばれた少年は、自分と同じ顔の少年にだけ、笑顔を向ける。
「イール、お弁当もってきた。食べよう」
シンを無視した態度に、済まなさそうな目礼が脇からある。
シンは肩をすくめる。いつものことだ、怒る気にもなれない。
天敵というものがあるなら、シンにとってこいつがそれである。
場所を移し、木立から抜けて少し開けたところに出た。三人でお弁当を広げる前に、収穫の木の実を広げてその中から一つぶ、赤い小さな実を拾い上げる。
「これ美味しいよ、食べる?」
それが、犬猿の仲のキールならシンははねのけただろう。しかしそうではなかったので、もう一人が制止しようとしたときにはすでに遅く、シンは差し出されるまま口に含んでいた。
すう……
こてん。
ころんと転がった体を、キールが受け止める。
イールは―――これまでキールと呼ばれていた双子の弟は、頭をかかえた。
「ココの実を丸ごと一粒食べさせるなんて……。半日は起きないよ」
「あっさりだまされるこいつがまぬけなんだよ」
ほがらかな態度を衣のように拭い落として、キールはばっさり切り落とした。
「でも……なんで?」
こんなところでシンを眠らせてしまって、何がしたかったのだろう?
「シンにみられちゃまずいだろ、ほら服ぬいで」
「ああ、そうか」
無情にもイールは納得した。
幼馴染みとはいえ、いろいろと、やっぱり他人には知られたくない事というのがあるのである。たとえば、キールがイールに渡した古ぼけた木のことだとか。
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