FF7を忘れている人の為に

この話に出てくるキャラ&用語の簡単な解説

神羅
惑星1の大企業。
魔こうと呼ばれる星のエネルギーに依って便利な機械をいっぱい作り出した。
しかしその反面、裏では悪逆非道な事もイロイロやっている……。

ルーファウス
父の跡を継ぎ、巨大企業神羅の若社長となった青年。
冷酷非情と言われている。

クラウド
原作の主人公。
FF7はとっても珍しいことに、主役が一番人気のゲームである。
私もそうだしなー。

ライフスト−ム
星の内部の流れ。
人は皆、死んだらここに還るという。
原始の流れ。

ティファ
クラウドの幼なじみ。クラウドとともに、幼い頃町を神羅に潰されている。
二人いるヒロインのうち一人。
もう一人はいま……いや、言わないでおこう。もしかして知らない人がいるかも知れないし。

バレット
同じく生まれ故郷を神羅に潰され、復讐を誓う男。
クラウドの仲間。

セフィロス
かつて主人公が全身全霊で憧れぬいた伝説のソルジャー。
原作ではまるでストーカーのように序盤からクラウドの行く先々に影を残していく。
歴代FFシリーズのなかでも存在感ではピカイチ。けれど弱さもピカイチのラスボス。

 

 

 

 

 

蒼ざめた蝶の死骸 1

 

 

 潮騒の音は、鼓動に似ている。



 淡く美しく輝く翠のひかりの中で目覚めたとき、彼の体は万全の状態とは言いがたかった。

 うっすらと目をあけると、木や、布で覆われた部屋の中には、翠の光が満ちていた。
 瞼ごしにも感じていた、翠色の光。
 木の木目や、布の織り目を柔らかく照らす明かりが、窓や、床の木と木の間から差し込んできていた。みすぼらしい部屋だというのに、無機質で囲まれる生活をしていた彼には、それはとても優しく心地よいものとうつった。

 そしてその優しい風景を切り裂くように、飛来してきた声があった。
 彼の意識が覚醒する最後のきっかけとなったのは、その声だった。

「あいつは私たちの住んでいた町を壊した張本人なのに!」

 目の届く範囲には、部屋のなかには誰もいない。
 あるのはただ、優しい緑の光だけだ。
 その声が響いてきたのは、ここではない別の部屋からだった。

 けれど自分に向けられたものでなくとも、その声は、かつては美しく飛んでいた蝶の見栄えよく飾った死骸を見たときのように、ぽつんと茶色いしみを落とし、胸に鋭い痛みを残す。
 彼はゆっくりと首を横に傾けた。

 たった、それだけの動作にも体にびりびりとしびれるような痛みが走った。
 けれどもそれによって変わった視界によって、自分が、どこか台の上に寝かせられ、何か防寒具をかけられていることに気づく。

 ……わたしはどうしてここにいるのだろう?
 それを考えた彼は、記憶をさぐる手に返ってきた空虚な感触に、愕然とした。
 何も思い出せない。記憶の紐をたぐる手ごたえは、軽い。その先には何もついてはいない。

 ガチャリと、扉があく音がした。
「……目、さめたか?」
 入ってきたのは、金髪の青年だった。
 この部屋に満ちている緑に、金色はよく映えた。

 青年は部屋の隅にある机の前の椅子を取ってくると、彼のそばにおき、どっかりと腰を下ろした。
「……こういう言葉をかけるのも、妙な成り行きだと思うけどな。―――大丈夫か?」
「私、は……」
 どういう関係でどういう人間なんだ?

 そう聞こうとしたのだが、続きは言葉にならず、それを青年は違う意味にとったらしい。
「頼むから、『お前らみたいな下賎な人間に助けられるぐらいなら野垂れじぬ』とか言ってくれるなよ。ここまで折角ひっかついで来たんだ。それが全部パーになる」

「……私は、死に……かけていたのか?」
 喉の皮が、気道にはりついている。一言喋るだけでも、気力と体力を総動員しなければ果たせないほど、体はぼろぼろだった。

「ああ……ライフストームのなかで、前後の記憶が、ふっとんだのか? ―――俺が知ってんのは、アルテマウェポンに襲撃された神羅ビルにお前がいたこと。生死不明と報道されてはいるが、ほぼ生存は絶望的とされていたこと、……そして、昨日、この村でライフストームの中に漂っているお前を見つけて大慌てでこの家にかつぎこんだこと」

 ライフストーム? 神羅ビル?
 わからない単語はいくつかあったが、大筋で理解することができた。
 自分は、どうやら彼に助けられたらしい。
「ありが、とう……」

「ルーファウス?」
 いぶかしげなその声は、もう聞こえなかった。
 吸い込まれるように、緑色の光が見守る眠りのなかに入っていった。

      § § §  

 二度目に起きたとき、あの金髪の青年はまだいた。
 そして「記憶がない」というということを告げると、随分驚きつつもやっぱりと言いたげに納得した。

「おかしいとは思ったんだ。お前が、俺に礼を言うなんてな」
「……私は、そんな人でなしだったのか?」
 ベッドの上に上半身を起こして、クラウドと名乗った青年が差し出したスープを飲みながら、私は聞いた。

 クラウドはその質問にすこし考えて、真顔で答えた。
「ティファは、そう言ってる。……でも、俺はちょっと違うと思ってる。お前は、支配者となるように生まれた。お前の父親が、支配者で、人を束ねていたからだ。まったくまっさらの、赤子の、生まれた瞬間から、お前にはそういう運命が刷り込まれていた。……おれは、いつも社会の最低層にいて、踏みつけられる側だったから、よくわからない。でも、上に立つ人間は、弱みを見せちゃいけないんだ。それはわかる。それに、全ての人に優しくなんてことも、人間だからできない。だとしたら、全員に平等に冷ややかでないといけないんだ。だって、そうでないと不公平だもんな。……おれは結局いつまでも落ちこぼれだったけど、身近にそういう人を見て、その人に全身全霊で憧れて、その人のことを人生かけて追った。だから、上に立つ人間がどうしなければいけないか、わかる。お前はそういう運命を生まれたときから背負っていたんだから、仕方がない、と、思う」

 嬉しかった。
 前の自分が、彼に嫌われてはいなかったと知って。
「……クラウド。きみと、私は、どういうつながりだった?」
「一言で言うなら、敵」
「え?」
 私は戸惑った。
「一度は戦ったし、さんざあんたの属していた組織……神羅っていうんだけどな、それの邪魔をした。だから一言で言うなら、敵だろ。……おれは生まれた町を神羅につぶされた。正義のために戦っていると、思ってた……。でも、すべては幻想で、あんたと俺の間には、薄皮一枚の隔たりしか、なかった」

 最後の一言には、質問を許さない力がこもっていた。
 私がスープ皿をカラにしているのを見て、クラウドは皿を受け取り立ち上がる。
 扉に手をかけた彼に、言葉を掛けた。
「……敵なのに、なんで助けたんだ?」
 肩越しに彼は振り返り、ひとこと、言った。


「誰かを助けるのに、理由がいるのか?」



次へ